[[宰相府藩国イグドラシル]] 2010/05/02:新記述に更新 **フェイクトモエリバー3 [#i9d27aec] [[アイドレスWiki>http://farem.s101.xrea.com/idresswiki/index.php?%A5%D5%A5%A7%A5%A4%A5%AF%A5%C8%A5%E2%A5%A8%A5%EA%A5%D0%A1%BC%A3%B3]] L:フェイクトモエリバー3 = { t:名称 = フェイクトモエリバー3 A71−G(W7)(乗り物) t:要点 = なし t:周辺環境 = なし t:評価 = 体格10,筋力14,耐久力9,外見8,敏捷15,器用5,感覚8,知識7,幸運4,対空戦闘15 t:特殊 = { *フェイクトモエリバー3の乗り物カテゴリ = ,,,{I=D,航空機}。 *フェイクトモエリバー3のイベント時燃料消費 = ,,条件発動,(戦闘イベント参加時)燃料−3万t。 *フェイクトモエリバー3の必要パイロット数 = ,,,パイロット1名。 *フェイクトモエリバー3の必要コパイロット数 = ,,,コパイロット2名。 *フェイクトモエリバー3の搭乗資格 = ,,,搭乗可能({I=D,航空機})。 *フェイクトモエリバー3の人機数 = ,,,5人機。 *フェイクトモエリバー3のアタックランク = ,,,AR18。 *フェイクトモエリバー3の航路数 = ,,,1航路移動(宇宙−地上)を行うことができる。 *フェイクトモエリバー3の局地活動能力 = ,,,宇宙。 *フェイクトモエリバー3の遠距離戦闘行為補正 = 遠距離戦闘行為,,条件発動,(遠距離での)攻撃、評価+2、燃料−1万t。 *フェイクトモエリバー3の夜間戦闘行為 = 夜間戦闘行為,,条件発動,なし。 *フェイクトモエリバー3の対空戦闘行為 = 対空戦闘行為,,条件発動,なし。 *フェイクトモエリバー3の基本オプション装備1 = ,,,基本オプションとして<フェイクトモエリバー3の対空ミサイル>8個を装備できる。 *フェイクトモエリバー3の基本オプション装備2 = ,,,基本オプションとして<フェイクトモエリバー3の爆弾>4個を装備できる。 *フェイクトモエリバー3の基本オプション装備3 = ,,,基本オプションとして<フェイクトモエリバー3のブースター>1個を装備できる。 } t:→次のアイドレス = I=D・ファイナルトモエリバーの開発?(イベント),I=D・アートポスト2の開発(イベント),I=D・王女専用トモエリバーの開発(イベント),悪童大サーカスの開店(イベント) } L:フェイクトモエリバー3の対空ミサイル = { t:名称 = フェイクトモエリバー3の対空ミサイル(定義) t:評価 = なし t:特殊 = { *フェイクトモエリバー3の対空ミサイルの定義カテゴリ = ,,,基本オプション。 *フェイクトモエリバー3の対空ミサイルのイベント時燃料消費 = ,,条件発動,(戦闘イベント参加時)燃料−1万t。 *フェイクトモエリバー3の対空ミサイルの対空戦闘行為補正 = 対空戦闘行為,,条件発動,(対空戦闘での)攻撃、評価+1。敵が射程に入ると自動で1回の対空戦闘行為ができる。 *フェイクトモエリバー3の対空ミサイルの初期AR修正 = ,,,AR−1。 *フェイクトモエリバー3の対空ミサイルの使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 } } L:フェイクトモエリバー3の爆弾 = { t:名称 = フェイクトモエリバー3の爆弾(定義) t:評価 = なし t:特殊 = { *フェイクトモエリバー3の爆弾の定義カテゴリ = ,,,基本オプション。 *フェイクトモエリバー3の爆弾のイベント時燃料消費 = ,,条件発動,(戦闘イベント参加時)燃料−1万t。 *フェイクトモエリバー3の爆弾の遠戦闘行為補正 = 遠距離戦闘行為,,条件発動,(遠距離での)攻撃、評価+2。敵が射程に入ると自動で1回の遠距離戦闘行為ができる。 *フェイクトモエリバー3の爆弾の初期AR修正 = ,,,AR−1。 *フェイクトモエリバー3の爆弾の使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 } } L:フェイクトモエリバー3のブースター = { t:名称 = フェイクトモエリバー3のブースター(定義) t:評価 = なし t:特殊 = { *フェイクトモエリバー3のブースターの定義カテゴリ = ,,,基本オプション。 *フェイクトモエリバー3のブースターのイベント時燃料消費 = ,,条件発動,(戦闘イベント参加時)燃料−1万t。 *フェイクトモエリバー3のブースターの航路数 = ,,,単独で1航路移動することができる。 *フェイクトモエリバー3のブースターの使用回数 = ,,,使用回数(1回)。 } } **I=Dの改良 [#q9245e99] L:I=Dの改良 = { t:名称 = I=Dの改良(イベント) t:要点 = 現在生産されているI=Dを手直ししたもの t:周辺環境 = 工場 t:評価 = なし t:特殊 = { *I=Dの改良のイベントカテゴリ = 藩国イベントとして扱う。 *I=Dの改良の位置づけ = 生産イベントとして扱う。 *その国用のマイナーチェンジI=D(乗り物)を作成できる。 *マイナーチェンジI=Dは1つの評価を1減らして、代わりに1つの評価を1増やせる。 *マイナーチェンジI=Dは出撃時に資源を必要としない。 *I=Dの改良のイベントカテゴリ = ,,,藩国イベント。 *I=Dの改良の位置づけ = ,,,生産イベント。 *I=Dの改良の対象 = ,,,藩国で生産することができる乗り物。 *I=Dの改良の内容 = ,,,このイベントを取得した国は、その国用のマイナーチェンジI=Dを作成できる。作成したものにあわせてアイドレスが作成、公布される。作成されたマイナーチェンジI=Dは任意の1つの能力を評価−1して、任意の1つの能力を評価+1する。また、出撃時に資源を必要としない。ただし、作成されたものに応じて付与されないことがある。 } t:→次のアイドレス = 独自I=Dの設計(イベント),人騎兵・騎士専用機の設計(イベント),人騎兵・王専用機の設計(イベント) t:→次のアイドレス = 独自I=Dの設計(イベント),人騎兵・騎士専用機の設計(イベント),人騎兵・王専用機の設計?(イベント) } **フェイクトモエリバー3 [#i9d27aec] L:フェイクトモエリバー3 = { t:名称 = フェイクトモエリバー3 A71−G(W7)(乗り物) t:評価 = 体格10,筋力14,耐久力9,外見8,敏捷15,器用5,感覚8,知識7,幸運4,対空戦闘15 t:特殊 = { *フェイクトモエリバー3の乗り物カテゴリ = I=D,航空機として扱う。 *フェイクトモエリバー3は遠距離戦闘行為ができ、この時、遠距離戦闘の攻撃判定は評価+2される。燃料を1万t消費する。 *フェイクトモエリバー3は宇宙で使用できる *戦闘時に1機につき燃料3万tを使用する。 *パイロットの他、コパイロット2名を必要とする。 *フェイクトモエリバー3の人機数 = 5人機として扱う。 *フェイクトモエリバー3のアタックランク = ARは18として扱う。 *フェイクトモエリバー3は宇宙から地上に限って1航路移動を行うことが出来る。 *フェイクトモエリバー3は以下のオプションを装備できる。全てのオプションは1回きりの使い捨てで、1個につき燃料1万tを消費する。編成時に消費すること{ ・対空ミサイル 敵が射程に入ると自動で一回の対空戦が出来、その間、対空評価+1になる。AR−1(最大8発装備可能) ・爆弾 敵が射程に入ると自動で一回の遠距離攻撃が出来、その間、遠距離戦闘評価が+2になる。AR−1(最大4発装備可能) ・ブースター 単独で1航路移動することが出来る。 } t:→次のアイドレス = ファイナルトモエリバーの開発?(イベント),アートポスト2の開発?(イベント),王女専用トモエリバーの開発?(イベント),悪童大サーカスの開店?(イベント) } #ref(http://idress.chinchill-a.com/FTR3-1s.jpg) フェイク、それは正しく“異形”の称号である。 ―ある手記の走り書きより。 ―*― /開発前史/ プロダクトコードA71。機体名“トモエリバー”。 帝國初の実戦型I=D。 曰く、火のついた棺桶、帝國ロマン偏重の産物、駄機…。 揶揄する声には事欠かかず、それがまた結構的を射てるものだから笑えない話であった。 それでもその大火力と圧倒的な機動性、そして比較的低コストで稼動する運用効率の高さによって、 帝國の戦線を支え続けた。 また、その汎用性の高さによって、いくつもの派生機を産み出した事も、一つの語り草となっている。 その派生機の中にあって、一際異彩を放つ機体がある。 トモエリバーの持つ空戦能力―それは、I=Dとしては異常なまでの推進力の高さがもたらす副産物であった―を限界まで向上させ、 空戦の要として再配備するという思想の元開発された機体である。 “トモエリバー2”として開発が進められたその機体は、“フェイク”の名を冠せられ、戦場へと飛び立った。 そして、開発史の一葉を彩る鋼の猛禽は今、宇宙を目指す―。 ―*― /概説/ フェイクトモエリバー2の改修にあたって、宰相府は現行機のポテンシャルを維持しつつ、宙域戦闘を要件定義として提示した。 宰相府及び帝國軍は、今後発生するであろう宇宙での戦闘に備え、宇宙空母を始めとする宇宙軍の整備を進めており、 当該機の改修要件はそれに合わせた急務と言えた。 この要件定義に対して、開発陣が下した改修項目は、 1.宙域戦闘能力 2.単独大気圏突入能力 以上2点であった。 1.宙域戦闘能力 宇宙空間での戦闘における要件を A.超広域空間を高精度で観測できる装備 B.超長距離射程に対応できる武装 C.宇宙空間での超高速戦闘に対応できる推進力 3点にまとめ、これに対応すべく改修プランを打ち出した。 観測装備は、越前藩国及びFVBとの高精度・大容量レーザー通信によるデータリンクシステムを搭載し、単独装備には背景輻射ソナー、 スペクトル偏移観測機、電波式レーダーによる3次元複合レーダーを搭載した。 ソフトキル対策には、搭乗者の生態情報を搭乗時に登録し、セキュリティコードとする他、 母艦及びステーションに対してナノセカンド単位で情報のフィードバックを行い、緊急時の復旧を可能とした。 武装に関しては、全面的な変更が打ち出された。 空域戦闘と宙域戦闘では、射程距離が0一つ異なる上、反動なども機動に大きな影響を与える為、無理からぬ事であった。 象徴的武装である長砲身の主砲、通称『ランス』は 同様の長砲身を持つ、高出力圧縮パルスレーザーキャノンに換装された。 大気による減衰を考慮しなくてよい宙域戦闘においては絶大な射程距離と命中精度を誇り、主力兵装としての活躍が期待される。 航空戦闘においても、減衰率を考慮に入れた上で、有視界戦闘レンジでの威力定義はクリア出来ると試算されている。 また、白兵戦兵装は宙域戦闘レンジにおいて活用が難しいと判断、オミットされた。代わりに、射撃用補助センサーポッドが装着され、 距離を問わず射撃精度を高めている。 その他、副武装として広域制圧用小型核ミサイル、防空用バルカンファランクス等が合わせて搭載された。 小型核ミサイルに関しては、航空戦闘においては被害が著しい事を考慮に入れ、ガンポッドや通常のミサイルを代替武装として装備する。 推進力に関しては、既存のトモエリバーに搭載された液体燃料ブースターを再検討・改良する事で対応する事となった。 トモエリバー自体は、コックピットにブースターを直結させるような設計ミスと言われかねない不良設計の為、 その運用が問題視されていたブースターであったが、ブースターそのものは出力、強度、対応環境など申し分無い完成度であった。 結果、現行機に搭載された2基のジェットエンジンは航空用として、 そして新たに3基目の改良型ブースターを機体と一体化させる形で搭載し、宇宙用の推進力とする事になった。 ―火のついた棺桶再来、とパイロットに揶揄されるようになるのは、もう少し後のお話である― 更に、宇宙という環境に対応すべく、コックピットなどの機密性や剛性は見直され、 装甲やシャーシに使用する素材などはより頑強かつ軽量なものとなっている。 これには、天領での試作機開発に用いられた技術が流用されている。 2.単独大気圏突入能力 これは、何らかの事由によって宇宙空母やその他施設に帰還が不能となった場合、単独で地上に帰還する必要性が発生する可能性の考慮と、 航空機としての特性を活用し、大気圏外から強襲を行う運用環境の拡大という両方の側面を併せ持った設計思想であった。 これに関しても、天領試作機の技術が多数流用されている。 併せて検討されたのが、パイロットへの負担軽減及び安全確保であるが、これに関しては、対G・対衝撃・処理の新型パイロットスーツ開発、コックピット部切り離しによる脱出ポッドによって解決を図った。 #ref(http://idress.chinchill-a.com/FTR3-2s.jpg) /*開発手記・工場長の述懐*/ フェイク3の開発にあたり、大きな問題の1つとなったのは、開発環境としての工場である。 製品の生産にいたるまでには、設計開発段階というものが、ある。これには無数のプロトタイプの作成が必要とされ、要求確認のための実験が行われる。ここでの失敗の数が、製品の質を決めるといっても、ある面では間違いない。 特に今回は、宇宙環境適用という仕様があったために、どうしても開発が難しくなった。ついでに言えば、単独での大気圏突破突入能力というのもあった。もうこの時点で実験がひどく大規模になるのは、明らかだった。 「そこで我々は工場を二か所に造った。地上の生産工場。そして開発用の、宇宙仮設開発工場。『同じ物を作るのに工場二つも作るとはどういう事だ』という不満は、宇宙工場で全ての開発システムを作った場合の予算と比較して黙らせた」 フェイク3の開発に携わった工場の親父は、そんな風に述懐していた。 かくして。フェイク3の開発には工場が二つ用意された。宇宙用仮設開発工場と、地上生産工場。特に宇宙用仮設開発工場は実験施設としての意味合いが強く、今後は宇宙用システムの開発実験研究所として使用されることが決まっていた。 /*/ 開発はまず、宇宙で始まった。これは基本要求である宇宙対応を最優先にするためでもあり、開発の流れから考えても、まずこちらをどうにかしないことには始まらないからでも、あった。 そして、結果として無数の火の玉を見ることになった。 テストマシンは次々に星に落ちていき、人のいない海に飛び込んでいった。ちなみに、地上生産工場のメンバの最初の仕事は、その落ちて来た機体の部品回収だった。膨大な人数と計算力を使って海流に流れたエンジンを探してくるとかしている。 /*/ 「これそのうち火の玉って呼ばれますよ」 「大丈夫、大気圏突破考えなければ一応無事だから」 開発が最も行き詰まっていた頃、宇宙工場の管制で火の玉になったフェイク3実験機を見ていた技術者達は、最早がっくりすらできず、軽い諦観を込めてそう囁きあっていた。 兵器開発部のレーザキャノンやソフト開発部のセキュリティシステムなどが着々とロールアウトされていく中、機体設計部の面々は焦りと緊張を止められずに、いた。何しろここが完成しなければどうしようもないのである。 この部署の遅れは、全ての工程を送らせる。 そして大気圏突破システムの第一段階達成目標は、二日後、とされていた。 焦らないわけがなかった。そして慌てて作ったあげく、ディスプレイに表示されたのはまたもや火の玉となったテスト用の無人機モデルだった。単に大気圏突破するだけのシステムを積んだ簡易版のそれは、今を持って充分な強度が得られずにいる。 まだ気密に穴があるのか。だが全部ふさいだはずだ。気密テストはしただろう。実験データでは大丈夫だったんだ。云々。記録データの情報を何度も再生する研究室。開発担当者達はふわふわ浮かぶ宇宙会議室で、焦燥に満ちた会議をしていた。 開発主任であるところの人物は、その中で一人、書類を見ていた。データで見ろディスプレイを睨めと周りからさんざん突っ込まれつつもやかましい俺は紙が好きなんだと言って貴重な資源使ってデータをプリントアウトする事で有名なこの人物。このとき、仕様書を睨みつけて、うーんと首をひねっていた。 それはシャーシに使われている新素材である。軽量、かつ剛性の高い頑丈な素材で、これこそぴったりだと開発者全員が満場一致で選んだ素材であった。 「どうしたんです?」 一人の若い技術者の男性が、行き詰まった会議から距離を取って主任のそばに寄った。主任は眠たそうにとろんとした目を書類に向けたまま、ちょいちょいと指をふった。 「これ。どう思う?」 「どれです」 「熱変化。素材の耐熱と剛性の変化グラフなんだが」 「ああ。これ耐熱にも強いんですよね」 「そう。そのはずなんだがさ、どう思う、これ」 変曲点を指さす主任。男はん、と首をかしげた後、苦笑した。 「データを疑ってるんですか?」 「ああ」 「いや、それは……」 確かに技術者は疑り深い物だ。自分のデータなんて信用できない、他人のデータなんてもっと信用できない、というのがある種の常識となっている。法則を見つけ、それどおりに定量的な結果が得られて初めてそれは認められる。 それ故に、仕様の確認には厳重なチェックがかかる。それはあらゆる開発のベースとなるからである。 「仕様書まで疑っても仕方ないと思いますけど」 「ああ。俺もそう思う。けど、論理的にはここしかない。あるいは別の理由で機体のサイズがどこかで変わってるんだ。作成段階で気密の確認が取れている以上、何かが原因で塑性変形が起ってる」 「それは……そりゃそうですけど」 「重量的にはいけるはずだ。地上でのシャーシの過重実験でもテストは通ってる。あとは熱の剛性特性を見るしかない。よし、依頼してくる」 主任は席を立つと電話をとった。管制を経由して地上施設に連絡する。事情を話して、すぐさま、温度特性の再調査が行われることに、なった。 しかしその間も、議論は続けられた。それ以外の可能性もあったし、どちらかというと、仕様を疑うという主任の判断が間違っている恐れは充分にあったのだ。主任は連絡後に一同へそのアイディアを説明したが、納得した者は誰もいなかった。当然であった。仕様書というものはそういうものである。定規を疑う者が機械工作を行えるわけがない。 仕様書を疑うという行為は誰に歓迎されることもなく。むしろ、仕事のしすぎでついに主任まで疲れたか、と思う者の方が多かった。 そして会議が一休みした頃。若い技術者であるところの男は、再度設計図の確認を仕様と思って部屋に向かう途中、ソフトウェア開発部の男に呼び止められた。 「よ。そっちはどう? 期日には」 「わかりません。間に合わないかもしれません」 「まあ、難航してるって聞いてるよ。おやっさん……あー、主任はどうしてる?」 「なんか、仕様書にいちゃもんつけてました。材料の。フレームのなんですけどね」 「そうなの? 大丈夫?」 「疲れてるんだと思います。だから今休憩中なんです」 「へぇ。そりゃまた……で、どうにかなりそうなの? 時間さえあれば」 「現状、原因不明ですね。会議では別素材のフレームの検討もされてます」 「それって時間かからない?」 「素材が変わればフレームそのものが再設計になる可能性が非常に高いですね」 「そりゃまずいだろ」 「まずいですね」 「うん。まあ、なんだ。がんばれ。後でお茶でも持ってくよ」 「コーヒーの方が喜ばれると思いますよ。じゃ」 ぽん、と肩を叩いて相手はさっていく。取り残された男は、疲れたようにため息をついた。 ついに、自分なんかに探りを入れてくるほど、ここの遅延が気になるようになってきたという事か。他の部署のスケジュールともあわせて、危険なくらいに。 叩かれた肩に触れる。 ずっしりとおもたい物が、乗せられている、気がした。 「うっそ」 翌日。会議室は騒然としていた。 主任の読みは当たり、材料の耐熱特性が実験値と仕様書とで異なっていたのである。 全員がありえねーと叫ぶ中、主任はげらげら笑いながらフレームの修正指示を飛ばした。 「まあ。なんだ。理屈はいつだって通るって事だな。馬鹿馬鹿しい物でも」 自信満々に、主任は言う。 その自信を裏付けるように、次の機体は、無事、地上へと降りていった。 とは言うものの、後日、 「いや。スケジュールもぎりぎりだったし。悪あがき的に仕様書見てこれくらいしか穴はないよなーと。それで神に祈る気持ちで実験依頼したんだよ。運良くそれだったから良かったが、外れてたら赤っ恥どころじゃすまなかったろうな。たぶん開発者はもう誰も意見聞いてくれなくなってただろうし」 開発主任やめる覚悟で依頼をした、と彼は語った。その肩には、あのとき、廊下で肩を叩かれた若い技術者以上のプレッシャがかかっていたのだった。 (イラスト:デザイン&仕上げ:うのり 彩色:GT/文(性能解説):吾妻 勲/文(開発手記):黒霧)